
『Sifu』のプレイ感想とレビュー。
「Sifu」のプレイ感想を書いていく。
この記事は、前のブログにて2022年4月に書いた記事を移行させたものとなっております。
#概要
メーカーは「SLOCLAP S.A.S」というフランスのメーカーらしい。
公式サイトを見たところ、他に「Absolver」というソフトもリリースしている模様。名前は聞いたことがあるような…
この二作に共通しているテーマは、ずばり「近接格闘」。その手の格闘アクションが、このスタジオの好みな方向性なのだろうか?
#戦闘(ゲーム性)
リアル寄りなハード格闘アクション。
カンフーがテーマなだけあって、今作の戦闘は近接格闘に特化している。
派手なエフェクトや奥義は無いが、とてもスピーディーでリアリティのあるカンフーアクションを楽しめる。
配置されている瓶や鉄パイプ等を武器とすることも出来る他、崖から敵を落としたり壁に当てて追加ダメージを与えたりなど、環境を利用した戦い方も可能。
プレイし始めは、リアル故に動きのもどかしさを感じる場面もあったが、慣れてくるととてもノリノリでカンフーアクションを楽しめて好感触だった。
今作には、隻狼の体幹に似たシステムがある。
ガードをするとゲージがどんどん溜まっていき、そのゲージが満タンになると危険な状態になるというイメージ。
今作はこの体幹ゲージが非常に溜まりやすく、ガード一辺倒だと速攻でガードを崩されて死ぬ。
多くの攻撃がガード可能となっており、かなり機能する場面が多いのだが、そこに歯止めをかける体幹ゲージがある。
しかし、回避には体幹の回復効果があるので、体幹が厳しくなったら回避を利用することで、またガードをすぐに使用できるようになる。
この設計は個人的に良かったと思う。この手のゲームは、どうしてもガードが安定でガードしかほとんど使わなくなるか、ガード不能攻撃や強烈なガード削りが多過ぎて、ガードが実質的に機能しておらず、結局回避を強要されがちになるかのどちらかが多い印象がある。
そして、その回避は今作では難しい。その理由はいくつかあり、一つは敵の攻撃パターンが覚えにくいという事。二つ目は、上下段という概念があるという事。三つ目は、回避の無敵時間がそこまで長いわけでは無い事。この辺が挙がる。
ここが練習のしどころで、また上達の実感のしどころでもある。最初はコテンパンにやられていた敵と、徐々に攻撃を把握し始めて渡り合えるようになっていくのはかなり楽しかった。
今作は死ぬことを前提としているバランスであり、率直に言って難しい。
敵の攻撃力とモーションに容赦が無く、ボスどころか雑魚敵一人にすら簡単に倒されてしまう。
しかし、上記の体幹周りのシステムを理解し、大技の決め方や当て方を掴んでくると渡り合えるようになってくる。
更に、死んでも年齢を重ねて復活できるというシステムがあるため、「死んだらそこで終了」ともならない。
敵のモーションも、初見では対処が難しいがよく観察すれば、意外とすぐに対応できるようになるように作られている。
総じて「ちょうどいい」と感じられる場面が多く、死に過ぎて萎える前に突破できるように作られていたなぁと感じられた。
今作の特徴的なシステムの一つに、70歳を超えるまで、死ぬと復活できるというシステムがある。
年を取れば取るほど攻撃力が上がり、体力が下がるという特徴がある他、短いスパンで死ぬほど復活時に重ねる年が増える。
死んでも復活できるとは言え、死ぬ度に着々と年齢が上がっていき、完全な死が近づいていくため、プレイしていて緊張感があった。
「復活できるからいいや」ではなく、純粋に「死にたくない」と強く感じられ、シビアな難易度がより映えているように感じられた。
上記の加齢システムについて、歳を重ねた際の違いがもっと感じられると良かったかな、感じられた。
筆者は、「年を取るほど、身体は弱るが技が洗練される」という意図があってこのシステムを採用したと聞いた。
それを鑑みると、たしかに理にかなった調整ではあるが、死ぬときは年齢に関係なくあっさり死ぬゲームだし、年齢間で大きな違いをそこまで感じることが出来なかった。
個人的な考えだが、年齢を重ねる程新たな技を使えるとか、技の性能が変わる等の方が、年齢によるプレイの幅が広がって面白そうに感じられた。
今作には、テイクダウンを仕掛けると抵抗して強化状態に入る雑魚がいる。(テイクダウンとは、相手の体幹が尽きた際に出せる必殺技。雑魚敵は即死する)
強化状態に入ると体力が全快するほか、攻撃が強化されてスーパーアーマーも付くようになり、非常に厄介になる。しかも、乱戦時ほどこういう敵が湧きやすい印象。
登場する場所は一部固定されているように見受けられたが、ランダムで登場する敵も多分いると思う。
複数を相手にしていて一人でも速く数を減らしていきたい中、倒したと思った敵が強化されて復活するのは、結構なストレスだった。
テイクダウンを使用しなければいいだけなのかもしれないが、今作は体幹と体力の都合上テイクダウンでとどめを刺す場合の方が圧倒的に多い。それぐらい、敵は体幹の方が先に尽きる。
この事から、どうしてもテイクダウンで倒しがちになる。というか、「テイクダウンを使わなければいいじゃん」となるなら、もう体幹システムがそもそも要らなくなる。
せめて、テイクダウンで復活する敵に目印をつけておくとか、何らかの対策を立てておいてほしかった。
この要素は、テイクダウンでスムーズに殲滅していく面白味に歯止めをかけるシステムになってしまっていたので、個人的には一番の減点要素。
ランダムで嫌がらせをされるのは、この手のシビアなアクションゲームには相応しくないと感じられた。
壁際に追い込まれるとほとんど何も見えなくなるレベルであり、壁際のハメをより加速させる要素になってしまっている。
今作は、狭いところで戦うシーンもそれなりに多い上、壁際から逃げるのが少し大変なゲームである。
それもあり、乱戦時だけでは無くタイマン戦においても、このカメラは悪魔的な存在になりがちだった。
#グラフィック・演出
綺麗とは言えない。
モーションは滑らかでよく出来ている。
カンフーがテーマなゲームだけに、きちんと躍動感溢れるカンフーアクションを実現してくれているのかというのが重要ではあったが、そのハードルはしっかり超えてくれている。
特に、テイクダウンの動きは見ていて痛快でかっこいい。
PS3時代のグラフィックと言っても過言ではないレベルなので、人によってはそこでテンションが下がるかも。全体的に安っぽい。
特に、人の肌の無機質感が凄まじい。インディーズ相応と言ったところか。
#ストーリー・キャラクター
テーマは好みだったが、全体的にあっさりし過ぎていた感じは否めない。
ストーリーは復讐劇。
好みな方向性ではあったが、オチがあっさりし過ぎて弱かったので、もう少し心に来る強い展開が欲しかった。
まぁ、武徳というものを重んじる、ストイックな主人公っていう描写と思えば“らしさ”はあったのかもしれないが…
また、ボスの倒し方によって2パターンに展開が変わるという設計をしており、全てのボスを特定の倒し方で倒すと真EDになる。
個人的には、真EDルートを進んだ後のボス達がどうなったのかの描写があると嬉しかった。
今作に登場するボスが、謎の力(植物を急速に成長させたり、炎を操ったり…)を使用するシーンがあるので、世界観がよく分からなかった。
リアルなカンフーゲームかと思っていたら、突然ミラクルイリュージョンが始まってしまうので、「こういうゲームだったっけ?」と思わずにはいられなかった。
まぁ、死ぬ度に復活できる主人公がいる時点で、リアルもへったくれも無いと言えばそうなのだが。
#システム・その他
遊びやすさに配慮はされている。
ステージは5つで選択性。そのステージに到達した最も若い年齢が随時保存されていき、ゲームオーバーになったら到達済みの好きなステージから、その年齢で再開できる。
初見では高齢で到達してしまったステージでも、上達して最初からやり直すことで、ステージ開始時の年齢を下げることが出来る。
つまり、上手くなるほど後半で余裕を作れるという設計になっている。
更に、ある程度ステージを進めるとショートカットが解禁され、ボス戦まですぐに飛ぶことも可能になる。
様々な点で親切に作られており、全体的に好印象だった。
スキルは、敵を倒すと手に入るXPを使用してアンロックしていく方式。
アンロックしたスキルは、アンロックに必要なXPと同じXPを5回追加で支払うと、永久アンロックされるという仕様もアリ。
ゲームオーバーになったり、ステージ選択まで戻ると普通にアンロックしたスキルは消えるが、永久アンロックされたスキルは消えない。
また、アンロック後に支払ったXPはきちんとカウントされているので、上手く進められなくても少しずつ永久アンロックに近づけていく事は可能。
例えば、「アンロック後に3回XPを支払ったスキルがある状態でゲームオーバーになっても、そのスキルはあと2回余分にXPを支払えば永久アンロックされる」ということ。親切設計。
他のシステムとして、情報ボードが挙がる。
情報ボードは、早い話が収集要素。ステージ内に配置されているアイテムを拾うだけの要素だが、後半のステージのアイテムを拾わないと前半で回収できないアイテムがあるので、「もう一度あのステージを遊んでみようかな」という気にさせてくれる。
他にも、ボスの倒し方が二通りあったり、新たに解禁した技の試し打ち等、何度も遊んでみようという気にさせてくれる要素が多い。
これらのことから、リプレイ性は高そうに感じられた。
#調整
概ね良好だが、不満点もアリ。
今作はまごう事なき死にゲーではあるが、特定の場合を除いて理不尽さを感じたシーンは無かった。
敵の攻撃に対して、見たまんま回避するだけで全て避けられるので、対策を立てること自体はかなり容易。
タイマン戦においては、インチキ臭い強攻撃だったり、「どう捌くの?これ」となる分からん殺しが無かったので、ストレスを感じるシーンがかなり少なかった。
訳わからんが重なると、攻略の解が出すのが難しくなる。そして、その状態が続けば続くほどモチベが下がっていく。
よって、「一見すると難しい」ぐらいがちょうどいいのだが、このゲームはそれを実践できていた。ここは評価点だと思う。
複数人に囲まれてしまい、壁際に追い詰められると大体の場合はそのまま死ぬ。
ガードをしても、すぐに体勢が崩されてボコられるのでガードで凌ぎ切るのはまず不可能。
かと言って、回避を連打しても隙間なく襲い来る攻撃をしのぎ切るのもまた不可能。というか、上段と下段攻撃が同時に来た場合はどうあがいても回避は無理になる。
敵をすり抜けることは当然ながら不可能であり、敵との位置を入れ替える技も、一度こちらが攻撃を当てなければ使えない。つまり、防御と回避を強要され続けていると入れ替えが出来ない。
で、何度も言っている通りこのゲームは死にゲーであり、敵の攻撃力が高め。二人に一気にボコられようものならば、即蒸発ものである。
これらのことから、壁際に追い込まれて複数人に殴られると、割と何もできずに殺されがちになる。
立ち回りを注意すればいいのだろうが、狭い所で戦う場合はどうしても追い込まれる場合が出てきてしまう。そうなった時の対処法が用意されていなかったのは減点要素。
今作はデスペナルティがあるゲームだから、なおさら死というものに抵抗が出来るゲーム。どうしようもなく死んでしまう状況が出来ないような配慮が欲しかった。
明確に中ボスと言われているわけでは無いが、今作には「タフ・攻撃が苛烈・高火力」と三拍子揃った雑魚敵が存在する。
それらが同時に2体登場する場面がちょいちょいあるのだが、個人的にはそこが不満だった。
ぶっちゃけ、あんな敵を2体同時に相手にするのは無理なので、このゲームを極めていない限りは逃げながらちまちま殴るのが正解となる。
それでクリアできるのでいいと言えばいいのだが、果たしてこれがカンフーゲームとして楽しい形なのだろうか?
正攻法でやろうにも、隙間なく殴られるのでまず勝てない。結局、逃げながら一発ずつ殴るだけ。つまらない。
というか、どのアクションゲームでもそうだが、そこそこ強くて本来タイマンで戦う事を想定しているような設計にしている敵は、同時に複数体出すべきではないと個人的には考えている。
純粋に、プレーヤー側が取れる対応に無理がありすぎる。仮に打開策があったとしても、結局逃げながら、分散させながら、遠距離でちくちく…という姑息、あるいは敵との駆け引き以前の戦いになりがち。
それって戦闘として面白いのか?逃げながら一撃ずつ入れる戦闘の面白味はどこ?結局分散させるなら最初からタイマン2連戦でよくない?遠距離戦を強要するような、戦略の幅を狭める戦闘ってつまらなくない?
色々なアクションゲームを遊んできたが、ソロゲーにおける複数同時配置の面白味は未だに理解できない。
#総評
※このソフトを遊ぶ際、何に期待していたか、あるいは何に期待していなかったかで配点が若干ながら変化します。また、各ソフトに独自項目を10点分設けています。
期待していた項目
- 戦闘(ゲーム性)
- 調整
期待していなかった項目
- グラフィック・演出
- ストーリー・キャラクター
(ゲーム性)
テンポのいいハードコアなカンフーアクション。最後まで飽きずに楽しく遊べた。
しかし、ランダムに強化される敵や、カメラワークの悪さなど、残念な点もあった。
・
演出
綺麗とは言えない。最近の有名タイトルに慣れているとしょぼく見える。
モーションの出来はかなり良いので、そこが救いか。
・
キャラクター
話のテーマ自体は好みだったが、最後の展開が少し弱かった。
キャラは渋かっこいい。
・
その他
一見するとシビアなゲームに見えるが、全体的に親切かつ歯応えのある仕様で遊びやすかった。
適度に敵の攻撃が分かりやすいので、負けてから打破できるまでの間がちょうどいい。
しかし、複数の中ボス戦や壁際のハメ等、ストレスを感じるシーンも少々あった。
(独自項目)
本格的なカンフーアクションという事で、カンフーをほとんど知らない素人でもそれらしい雰囲気を感じ取ることができた。
変な脚色が入っていない地味な感じが、また硬派なカンフーっぽくて良し。
コアなカンフーアクションゲーム。
敵との駆け引きや、死に覚えゲーが好きな人に合う良作。
スピード感アリ、爽快感アリ、ついでに歯応えもアリ。好きな人はとことん好きだと思う。
アクションもストーリーも外見も、あらゆる面で硬派なゲームだった。
あるのかどうかは知らないが、続編が来るなら期待して待っていたい。
終わり。
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