『蒼き雷霆 ガンヴォルト 鎖環』のプレイ感想とレビュー。
#概要
開発・販売ともにインティ・クリエイツ。「ロックマンゼロ」や「ぎゃるガン」などを制作したメーカーである。
主にドット絵で動く2Dアクションを制作しているイメージが強いが、今作もその例に漏れず同じ作風の作品となっている。
#戦闘(ゲーム性)
ハードコアでハイスピード。
元々コアでスピーディーなアクションゲームを多々制作しているメーカーということもあり、今作もその例に漏れていない。
つまり、「ムズくて速い」ゲームであるという事。しかし、救済措置が序盤から利用できるため、詰んだり進行が滞ることはおそらく無い。
今作には下記の通り、4種類の攻撃手段が用意されている。
- 剣攻撃
- 護符撃ち
- スペシャルスキル
- スキル系イマージュパルス
上記の中でメインとなるのは、剣攻撃と護符撃ち。
この二つの関係が少々特殊で、『護符撃ちのダメージは剣攻撃(雷霆煉鎖を含む)を当てることで初めて本当のダメージとして清算される』というものがある。
イメージ的には、護符を当てた時点では仮のダメージを相手に与えているだけであり、実際に敵の体力を削っているわけではない。
この仕様がじわじわと味を出してくる。なんといっても、遠距離攻撃を当てた後に一度相手に近寄らなければならないので、安置から一方的に攻撃し続けることが無い。
リスクを背負う場面が必ず出てくるので、短いスパンで被弾のスリルを味わうことになり、緊張感が出る。
更に、この仕様(と設定)がストーリーのとある場面でカギを握ることになるため、そのあたりもきちんと考慮されていたのは褒めどころだったと思う。
個人的に、今作を象徴するアクションは雷霆煉鎖だと思っている。
飛び道具である護符を放ち、当てた敵の元へワープして切り付ける。全体的にスピードが速いゲームではあるが、そのスピードにプレイヤーがついていく大きな助けとなっている。
それに加え、このワープを利用して敵の攻撃を避けたり、ステージを縦横無尽に高速で進んで行ったりと、攻撃手段以外としての用途にも利用できる。
このアクションを器用に使用してプレイするのは、やり応えがありとても楽しかった。
特に、ボス戦においては様々なタイミングで様々な回避に用いることになるため、そのアイディアの豊富さには感心させられた。
そもそも『イマージュパルス』とは…
- スキル系
- パッシブ系
- ソング系
上記の3種に分類されるカスタマイズ要素を指す。
かなりの種類が用意されており、工夫の幅はかなり広い。
プレイヤーの中で様々な遊び方を模索できるのは評価点。かといって、そこまで頑張ってカスタマイズしなくても十分クリアできるのもヨシ。
#グラフィック・演出
昔ながらのドット絵は良くも悪くも変わりが無いが、他の部分で盛り上がれる。
ステージを進んでいく中で、クードス(スコアのようなもの)をある程度稼いでいくとBGMが歌に変わる。
ノリのいい曲が多く、プレイしていてテンションが上がった。個人的に好みな曲が多かったので、この曲を流すために上手くプレイしようという気分にもさせられ、プレイに対するモチベーションがかなり上がった。
ステージ進行中に、キャラクターたちが会話するというシステムだが、和む内容が多くて結構面白かった。
もちろん、敵対している人物とのやり取りもあるので、全部が全部ゆるく聞けるものではないが、それはそれで因縁が戦闘中で演出されるのは雰囲気が出てよろしい。
全く画面の邪魔にならないというわけではないが、過度なものではないうえに、設定で消すこともできる。その選択権がプレイヤーに用意されていたので、減点要素にはならないかなという評価。
完全に個人的な趣味だが、カットイン演出って好きなんすよね。
今作には多数のカットインが存在するため、見ごたえがあった。ラスボス戦で主人公のカットインの文言が若干変わっているのも、芸が細かくて〇。
音楽やカットイン等の演出は頑張っているように感じられたが、メインのドット絵には特に目新しい感じは無かった。
見ようによっては「レトロ感がある」とポジティブに受け取ることもできるだろうが、かといってレトロ感をウリにしているゲームだとは感じられなかったので、ここは単純に「グラフィックが荒い」と受け取らざるを得ない。
「せっかくのキャラデザがもったいない」と感じられたので、このメーカーの今後の課題の一つだと勝手に思う。
#ストーリー・キャラクター
シリーズ初見の身からすると、エンディングが少々薄味のように感じた。
クールだけどどこか子供臭さもある主人公、最強だけど(一時的に)犬になった前作主人公、かわいいショタ、筋肉大好き人間、社畜、チョベリバ…と、様々な属性を持ったキャラが多数出てくる。
重い雰囲気ではなくコミカルに話は進んでいくので、気分が落ち込むことなく話を見守っていられたのは、個人的にありがたかった。
新キャラがほとんどだったのか、今作が初見でもあまり置いてけぼりなイメージを受けず、すんなりゲームの雰囲気に馴染めたのも高評価。
ストーリーは、暴走した前作の主人公を鎮めて仲間にし、その主人公に起因する事件を解決していく…という感じ。
最終的に半端なところで終わるのだが、続編ありきのストーリー展開だと考えるとまぁ妥当な終わり方だったのかもしれない。
しかし、『あ、ここで終わるのね』という印象を受けたので、もう少しすっきりする終わり方をしてほしかったかなぁというのが正直な感想。
個性的なキャラクターが多いのは評価点だったが、そのキャラの背景についての描写があまり無いように感じられた。
ストーリー前半で仲間になる4人はその傾向が強く、その中でも特にレクサスはもう少し何らかの描写があってもよかったのではないか?
なぜレクサスなのかというと、それなりの過去を匂わせる会話が終盤のライブノベルで聞けるため。おそらく、これはプレイしている人の多くが感じるはず。
#システム・その他
やり込みやイマージュパルスの収集において、練習と周回はずっと付きまとう。
しかし、今作はミッション選択制を採用しているので、いつでも過去のミッションをリプレイすることができる。
更に、トゥルーエンド到達後には、『スペシャルミッション』という形で各ボスとも戦えるようになるので、ボス戦の練習もかなり楽になる。
この手のゲームのやり込みにおいて、難しいボス戦の練習というのは常に付きまとうものだったが、そこに対する配慮ががきちんとされていたのは好印象。
ステージクリア時に特定条件を満たしていると、その分だけイマージュパルスの抽選権を獲得できる。
いわゆるガチャのような要素であり、ステージをクリアする度に『開封タイム』のような軽いお楽しみタイムが用意されていたのは面白かった。
初回は確定で手に入るイマージュパルスがあったり、未入手のイマージュパルスのほうが抽選が優遇されていたり(※筆者の体感です)と、コンプリートがそこまで長い作業にならないよう配慮されていたのもgood。
個人的に、かなり致命的なエラーだと感じられた。
今作には、スペシャルスキルでボスにとどめを刺すとボーナスでクードス(スコアのようなもの)が入り、スコアアタックや高ランク狙いのプレイだとこのボーナスの獲得は必須となる。
しかし、一部のボスと主人公のスペシャルスキル発動時、画面が黒くなりそのままエラー落ちすることがそれなりに発生する。(体感5%~10%程度)
スコアアタック中のボス戦においてスペシャルスキルを放つ時は、本来ならばその時点でクリアが確定している場合がほどんどなので、そこから無理矢理ゲームを落とされてステージの最初から…となるのは、かなり凶悪な不具合である。
筆者は何度も経験したので、レアなエラーというわけではないと思われる。この不具合の存在は、かなりの点を落とす要因にせざるを得ない。
筆者はPS5版をプレイしていたが、PS5にしてはステージ突入時のロードが長いように感じられた。
一旦ステージに入ってしまえば、ステージの中継地点通過時やりスタート時のロードは早いので問題はないのだが、
昨今のロード時間とゲームのクオリティを鑑みると、そこまで重たそうなゲームではないのに、ここまでロード時間が長いのは素直に減点要素。
#調整
ボス戦と一部のステージは歯応え抜群。
このゲームのボス戦は、敵の攻撃を避けつつ攻撃を重ねていくのがセオリーとなるのだが、初見だとボスの攻撃がかなり苛烈で避けられない。
被弾がかなり嵩むことになるのだが、よく観察して雷霆煉鎖やダッシュを活用すると、すべて綺麗に回避できる。(当たり前ではあるが)
この研究や試行錯誤が楽しいと感じられる人であれば、今作はおあつらえ向きのソフトになるだろう。
上述したように、ボス戦はかなり難しい。しかし、かなりいい塩梅の救済要素が存在しており、クリアするだけならばかなり簡単になっている。
かといって、スコアタックや難易度ベリーハードのようなやりこみとなると、救済要素は機能しなくなり難易度は大きく上昇する。
あくまで救済されるのは『ノーマルとハードの通常クリアのみ』という印象を受けたので、この仕様の作りはお上手だった。
難易度ノーマルの時点で、ボスの攻撃は容赦がない。
アクションに慣れている人であれば「歯ごたえ抜群」程度の感覚だろうが、そうでない人からすると「どうしたらいいの?」と感じてしまう可能性が高い。
いくら被弾してもカゲロウ(ダメージを無効化してくれる救済要素)が強すぎるので、クリアだけならできる。しかし、果たしてそれが「楽しい」と感じられるだろうか?
ゲームとは本来難しかったり上手くできないことを反復して乗り越えることに面白味があるのだが、最近はそこまでハードなやりこみを要求するほうが稀。
そのトレンドを鑑みたときに、この難易度はアクション初心者が楽しめる水準ではないように感じられた。
…まぁ、自分のようなゴリゴリなアクション好きにはかなりやりがいと爽快感がある良作に感じられたので、結局は人次第ではあるのだが。
今作のラスボスは、作中でもぶっちぎりの強さを誇るのだが、なぜかそこでのみカゲロウが使用できない。
話の展開上仕方がないとはいえ、最も救済が必要な場面でその利用が制限されるのは、少々かみ合っていないように感じられた。
#総評
※このソフトを遊ぶ際、何に期待していたか、あるいは何に期待していなかったかで配点が若干ながら変化します。また、各ソフトに独自項目を10点分設けています。
期待していた項目
- 戦闘(ゲーム性)
- 調整
期待していなかった項目
- グラフィック・演出
- ストーリー・キャラクター
(ゲーム性)
護符と雷霆煉鎖を軸とした、スピーディーなスラッシュアクションは爽快感が抜群。
敵の猛攻を攻防一体な動きで捌きつつ渡り合う感覚は、スリリングで楽しめた。
・
演出
グラフィックは荒い。
しかし、スタイリッシュに進行していくと流れるクードスソングはアップテンポなものが多く、プレイヤーのテンションを更に引き上げてくれる。
・
キャラクター
個性的なキャラが多数登場するものの、ストーリー自体は短くてあっさりしてる。
続編を匂わす終わり方をしているので、次回作で大きく動くのだろうか?ただ、主人公は可愛い。
・
その他
ロードが長く、エラー落ちが決して少なくない頻度で発生する。
救済要素が充実していたものの、他の基本的な部分で大きく点を落としていた印象。
難易度は高めだが、救済要素のおかげでクリアするだけならば苦労しない。
クリア目的だけなら手軽に遊べるし、やりこみたい人は救済抜きか完璧プレイをしなければ評価が振るわないようになっている等、そのあたりの着眼点は良かった。
(独自項目)
『雷霆煉鎖』のシステムがとにかく秀逸。道中は雑魚敵をテンポよく斬り捨て、ボス戦では攻めだけではなく守りとしても考えて運用する。
このスピード感と戦略性はよく考えられており、高い水準で両立させられていたと思う。
古典的だが正当進化した2Dアクション。
昨今の2Dアクションといえば『メトロイドヴァニア』だが、その時代の中でもステージ選択制の戦闘特化なゲームをリリースするという姿勢に天晴。
グラフィックはいまひとつだが、曲やライブノベルといった演出がその遅れをカバーする。
スピーディーなアクションは疾走感に溢れ、やり始めこそ難しさを覚えるものの、コツを掴んでゲーム性を理解してくると、スタイリッシュに敵を打倒する爽快感に変わる。
次回作がありそうな終わり方だったので、次作があるのなら更なる進化に期待したい。
終わり。
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