
『マイルズ・モラレス』のプレイ感想とレビュー。
この記事は、前のブログにて2022年10月に書いた記事を移行させたものとなっております。
#概要
インソムニアックは、ラチェット&クランクシリーズやスパイロ・ザ・ドラゴン、そしてレジスタンスシリーズ等のゲームを作っていたゲームメーカー。
知る人ぞ知るメーカー…というほどマイナーなメーカーでもないが、知らない人もそれなりにはいるのかも?いずれにせよ、実績は十分すぎる程持っているデベロッパーである。
特に、筆者はラチェクラシリーズの初代からのファンなので、このメーカーには個人的な思い入れがあったりする。
ジャンルは「オープンワールドアクションアドベンチャー」とあるが、要はオープンワールドである。最近流行りのアレ。
どちらかというとサンドボックスっぽいような気もするが、そもそもサンドボックスとオープンワールドの定義付けがかなり曖昧なようなので、考えるだけ野暮なのかもしれない。
#戦闘(ゲーム性)
正統進化。
複雑なコマンド操作や、反射神経が要求されるような忙しさは無い。
しかしながら、ボタンを連打するだけでコンボが繋がったり、ワンボタンを押すだけでアクロバティックな動きが出来たりと、とにかく見た目の割に操作が簡単。
敵攻撃予兆が可視化されているので回避もしやすいし、アクションゲームに不慣れでも綺麗に戦闘を運びやすい。
総じて、激しいながらも誰でも遊べるヒーローゲームといったところ。有名なコンテンツでこの仕様はよく作られていたと思う。
ヴェノムアクションとは、ヴェノムゲージを消費して発動できる強力な攻撃技。いくつか存在するが、そのどれもが大きな威力を発揮する。
音やエフェクトがかなり激しく、当たった時の爽快感は折り紙付き。
前作では、フィニッシュムーヴ以外は単調で地味になりがちな戦闘だった。実際、飽きが来るのはかなり早かった。
しかし、今作はこのヴェノムアクションがいいアクセントになっており、結構な頻度で手痛い一撃を入れられるので、地味さが大きく改善されていたのは評価点。
また、ヴェノムゲージは、ヴェノムアクション以外に体力回復にも使用することができるため、腐ることはほとんど無い。リソースの使い道が複数あるのも好印象。
カモフラージュについては、そのままの性能。つまり、姿が透明になるだけ。
ステルスシーンでは勿論活躍するが、なんと通常の戦闘場面においても使い道があるという凝り具合。
発覚している状態でカモフラージュを使うと、敵が驚いて混乱状態になる。あまり使いどころは無かったが、発覚してもまた簡単に仕切り直すことができるので、これはこれで親切。
てか、大体のゲームではこういう「透明化する技」って発覚すると使えなくなる印象があったけど、そうじゃなくて逆に何らかの効果を発揮するっていう仕様が個人的に面白いと感じられた。
スパイダーマンらしい、スパイダーウェブを使用したターザン等の移動は健在。
広々とした美麗なアメリカの街を、あの手この手で自由かつダイナミックに飛び回るのは気持ちがいい。
画面の中のスパイダーマンが、風を切って飛んでいる感覚がよく伝わってくるので、移動しているだけでも楽しいと感じられてしまう。
ヴェノムアクションやカモフラージュのような新しい要素が追加されたものの、根本的な戦闘システムは変わらない。
コンボを自分で考えて構築したり、小難しいテクニックを使用して自由に動き回れるというわけではない。
敵の攻撃も予兆が表示されたら回避を押すだけ。回避の判定は緩めなので、なんとなく攻撃が来そうと感じられたら回避を押せば問題無い。
良くも悪くも簡易にまとめられているので、戦闘における工夫の余地はあまり広くない。
この辺は人によって受け取り方や感じ方は変わるだろうが、個人的にはまだ若干ながらの物足りなさを感じた。
#グラフィック・演出
とても綺麗。
街並みから人の肌まで、至る所が“綺麗”で満ち溢れている。文句のつけようが無い。
人の表情もとても細かく動くので、ムービーシーンでも特に違和感を感じることは無かった。
この部分は、全体的に良く作られていたと思う。
#ストーリー・キャラクター
あまり好印象では無かった。
好みの問題だろうが、主人公マイルズというキャラがそこまで刺さらなかった。
ピーターのような飄々とした感じも無く、親友であるガンケのような、裏方ならではの器の大きさも感じられない。
マイナスというわけでもないが、特に愛着が湧くキャラでは無かった。
ピーターのカリスマ性に比べると、魅力は一枚落ちていたかなぁという印象。良くも悪くもお利口すぎる。
ネタバレになるが、フィンがただの自己中にしか見えなかったし、マイルズがあそこまで叔父に怒る理由も分からなかった。
で、最後の演出。「フィンが尊い犠牲になり街が救われた…」的な演出が成されていたが、結局のところ自業自得では?何一つ感動する要素が無かった。
ギャング組織に入って街や(悪徳とはいえ)一企業に混沌を振り撒き、それを諫められると逆切れって…。
それらしい目的や動機があるにせよ、やっていることが犯罪なことに変わりは無い。
そこを都合よく無視しているようなフィンについては、全く感情移入も感動もできなかった。
叔父との諍いについては、もしかしたら筆者の理解が間違っているだけだったかもしれない。
ストーリー終盤の、ロクソン社内でのクリーガーとの会話をマイルズも聞いているというテイで見ていたが、もしそうだとしたらちょっと叔父にキレすぎでは無いか?(この理解が間違えていたらごめんね)
複雑な血縁関係やマイルズの目的があったにせよ、マイルズを拉致ったのはあくまで自分の事を思って取ってくれた行動だったわけで。
あんなに激昂してバチバチに殴り合うまでに発展するというのは、ちょっと度を過ぎた怒りのように感じられてしまって違和感を覚えた。
#システム・その他
一部を除いて良好。
一番最初に挙がる評価点は、ファストトラベルの早さ。PS5だからというのもあるだろうが、ファストトラベルが快適過ぎた。
マップ移動自体が快適だったこともあるが、ファストトラベルがここまで高速だったので、移動周りのストレスが皆無だった。やはり、読み込みの早さは正義である。
スキル習得やガジェットに関しては前作とほぼ同じ作り。レベルが上がるとスキルポイントが手に入り、それを使用してスキルを習得する。
経験値は戦闘や移動、あるいはミッションをクリアすると手に入る。稼ぎが必要になるという場面は存在せず、普通に遊んでいるだけで十分に稼げるのは良心的。
ガジェットは、ミッションをクリアすると手に入るトークンと、マップに点在している収集物を拾得すると手に入るトークンの二つを使用してアップグレードできる。
ミッションも収集物も集めるのは簡単だったので、キャラクター強化に関してもどかしさを感じることが無かった。
特に、要所要所で登場するパズルパートにて、次に何をすればいいのかが少し分かりにくい場面があった。
それに加えて、ストーリー後半に登場する音声を探す謎解き要素についても、説明が雑過ぎてしばらくどうすればいいのか分からなかった。
分かってしまえばなんてことは無かったのだが、UIの微妙さと説明の悪さのおかげで、無駄にややこしくなっているように見受けられた。
#調整
コンセプトに沿った作り。
筆者は、スタンダードな難易度だったであろう「AMAZING」でプレイしていたが、簡単過ぎず難しすぎずでいい塩梅だった。
更に、難易度が4,5個ぐらいから選択できる仕様になっているので、その人によって適した難易度調節が可能なのも〇。
敵の種類がいくつかあるが、それぞれに対して有効な行動を取れば簡単に処理できるので、過剰な面倒さや不快感を感じるシーンはかなり少なかった。
回避も連打していれば大体なんとかなるので雑に強いし、ガジェットという救済もあるので、手軽にスパイダーマンらしく悪党を一掃できる調整になっていたのは良し。
アクションゲームとしての歯応えをある程度は残しつつも、その一方で「スパイダーマンになり切るゲーム」というコンセプトをしっかり実現できていたと思う。
#総評
※このソフトを遊ぶ際、何に期待していたか、あるいは何に期待していなかったかで配点が若干ながら変化します。また、各ソフトに独自項目を10点分設けています。
期待していた項目
- 戦闘(ゲーム性)
- 調整
期待していなかった項目
- グラフィック・演出
- ストーリー・キャラクター
(ゲーム性)
無印版に比べると、改善されている点がいくつか散見されて好感触。
新要素のヴェノムとカモフラージュは、ゲームに対して両方ともいい方向に作用していたと思う。
・
演出
純粋にキレイ。街並みから人物まで、美麗なグラフィックで堪能することが出来る。街も遠くまで見渡せるので、観光ゲー的な楽しみ方もできる。
街も遠くまで見渡せるので、観光ゲー的な楽しみ方もできる。
・
キャラクター
前作に比べると、あまり感じるものは無かった。
特に、後半からのストーリー展開やキャラクターにはいまいち入り込めず、良い印象を受けなかった。
・
その他
早いファストトラベル、親切なチュートリアル。
パズルや音源探索のパートが少し分かりにくかったぐらいで、その他の部分は親切に作られていた。
選択できる難易度が豊富なので、人によって適度な難易度で遊ぶことが出来るのは〇。
通常の難易度と思われる「AMAZING」でもそこそこ歯ごたえがある。
(独自項目)
ウェブを使った縦横無尽な高速移動に、スタイリッシュで痛快な戦闘を楽しめた。
正直に言ってしまえば、自分はスパイダーマンやアメコミというものをほとんど知らない。
しかし、なんとはなしに「アメコミヒーローっぽさ、スパイダーマンっぽさ」を感じることは出来たので、その辺を楽しむにはとても良いゲームだったと思う。
キャラゲーの枠を超えたアクションゲーム。
スパイダーマンというコンテンツをほぼ知らなかった人間でも楽しめたので、純粋にゲームとしての出来が良かったのだろう。
お手軽で爽快感あるスタイリッシュ戦闘に、ウェブを用いた自在な高速移動と、「動かしているだけでも楽しい」の典型。
これは触ってみればわかると思う。どこからでもすぐにピョイーンと飛んでいき、現実では到底体験できないような軌道を描いて街中を駆け抜けていくあの感覚は、唯一無二の体験だった。
多少賛否が分かれそうな部分はあったが、本当に”多少”というレベルだったので「気になる」と言う人はあまり出ないと思う。
全体的に高評価。次回は「ウルヴァリン」をテーマにしたゲームを制作しているようだが、そちらにも期待したいですね。
終わり。
コメントを残す